死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる
「もう一度死んで、また私と出逢ってくれ。そして今度こそ結ばれよう、クローディア」
「嫌よ!」
クローディアは間髪入れずに返すと、あろうことか、首筋に当てられている刀身を右手で掴み、キッとフェルナンドを睨みつけた。
「なっ…」
まさかクローディアが剣を掴むとは思いもしなかったのか、フェルナンドが怯む。その隙にクローディアはフェルナンドから少し距離を取り、精一杯声を張り上げた。
「私はこんなところで死なないっ!リアンと共に、生きていくわっ…」
「よりにもよって彼奴と生きるなど、私は絶対に許さない!!」
きっと、リアンを選ぶというクローディアの言葉が、フェルナンドの導火線に火をつけたのだろう。
フェルナンドの手にあった剣が、今度こそクローディアに突きつけられる。
「オルヴィシアラ王国の王位継承者はこの私なのだ! 正統な血筋が彼奴など私は認めない!」
右の手のひらから血が流れていくのを感じながら、クローディアは瞳を瞬いた。
(──リアンが、正統な血筋?)
側室から生まれた、禁色を持って生まれた第二王子。そう聞いていたし、誰もがそう思っていることだろう。だが今のフェルナンドの言葉は、嘘しか吐かなかったその口から放たれた、ただ一つの真実のように思えた。
「よく聞け、クローディア。間もなくこの城は我が軍に包囲される。皇帝はお前と民の命と引き換えに死を選ぶだろう。そして私は白銀色の髪のお前を妻にし、偉大な王になるのだっ…!」
銀色の刀身が陽光を弾いて、禍々しい光を放つ。フェルナンドの青色の瞳はそれ以上に冷たく、残虐な光を宿していた。
もはやフェルナンドはその剣でクローディアの命を奪うことに、何の躊躇いも抱いてはいないようだ。
まるでそれが、運命だとでも言うかのように。
「─────」
勢いよく剣が振り下ろされる。もはや誰にも、この男の凶行を止めることはできないだろう。
そんな絶望が胸をよぎった、その時。
白い外套がクローディアの視界を覆い、キン、と無機質な金属音が響き渡った。