死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる
「……あの方に、ディアのことを聞いたのです」
ぽつりぽつりと、言葉を掬い取るようにエレノスは語っていった。
クローディアがヴァレリアンと婚姻を結んだ直後から、フェルナンドが涙ながらに語ってきた夢物語のようなことを。
「フェルナンド殿下はディアと夫婦であり、ふたりはヴァレリアン殿下に殺され、時を遡ってきた、と…」
「そのような現実味のない話を鵜呑みにするとは、そなたらしくない」
ルヴェルグと共にエレノスの話を聞いていたリアンは瞠目した。兄のことは好きではなかったが、殺意が芽生えたことはない。感情を抱くのが無駄だと思っていたからだ。
(……だから、なのか)
リアンはゆっくりと息を吐きながら、瞼を下ろした。
これまで不思議に思っていたことがあったが、今の話を聞いて答えが出てきた。
まず、兄──フェルナンドが隙あらばクローディアに接触しようとしていたのは、彼女を欲していたからだ。夢物語をまことにするために。
初めは王太子である自分ではなく、妾妃が産んだ第二王子が選ばれたことへの当て付けだと思っていたが、そうではなかったらしい。
リアンは瞼の裏で、クローディアと出逢ったばかりの頃を思い返した。
城下町で偶然出逢い、建国記念の夜会で再会し、何者かに刺されて──その怪我から起き上がれるようになった頃に開かれた晩餐会の夜に、リアンが泊まっていた部屋の前でクローディアが襲われていた。
その時、フェルナンドはこう言っていたのだ。