死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる

「──申し上げます!東の国境にて大軍が現れ、オルシェ領軍と睨み合っているとのこと!」

「何だと?」

「領主代理のベルンハルト様、及び前当主様から、援軍の要請が!!」

「一体どこの軍だ!」

「落ち着け、ラインハルト」

声を荒げたラインハルトを、ルヴェルグは宥めるように肩に手を添える。つい先ほどまで兄の顔をして弟の話を聞いていたルヴェルグは、もう皇帝の顔つきになっていた。

ルヴェルグは流れるような動きで立ち上がると短い階段の先にある玉座に腰を下ろした。それに倣うように、騎士達は配置に着き、重臣の筆頭であるグロスター宰相も皇帝の斜め後ろに立つ。

リアンはエレノスの隣で前を見据えた。

「ラインハルト、直ちに騎士団と共にオルシェ領へ向かえ」

ルヴェルグの迅速な指示に、ラインハルトは「はっ」と短く返事をすると、騎士団長と共に駆けて行った。

「状況は?」

「はっ、敵の先頭にはオルヴィシアラの旗が。あとはマーズ、オーガスト、ベルベットの三国です」

三年前に共に平和な道を歩んでゆくと約束を交わした国々の名を聞いて、ルヴェルグの表情は険しいものになった。

「愚かだな。あれだけの死人が出たというのに、また繰り返そうとしているのか。──エレノス」

はい、と弱々しい声で返事をしたエレノスは、ふらりと立ち上がるとルヴェルグの前で跪いた。それを見下ろすルヴェルグの瞳には、深い悲しみが宿っている。
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