死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる
聞いてください、と。そう言うかのように、人差し指を唇に当てられ、声が喉元を越えなかったのだ。
「この男の刑が執行される日に、ある方がこう言ったのです。──“あなたは母に望まれて生まれてきた”と」
「───っ、」
「そう言ってくださったのは、二十年もの間、塔に幽閉されていた──ヴァレリアン殿下でした」
ぽろりと。またクローディアの瞳から涙がこぼれ落ちる。
王国に嫁いだ時、その名を聞くこともなければ姿を見たこともなかった。だから殺されてしまっていたのではないかと思っていたのだ。
けれど、リアンは生きていた。過去でも辛い目に遭っていたのに、それでも誰かに優しい声を掛けていたのだ。
「……そう、リアンが…」
囁きのような声を吐いたクローディアに、アルメリアは愛しむように微笑みかけた。
「あの方を選んだと聞いて、どれほど嬉しかったことか。今度こそ幸せになれる方と、歩まれてゆくのですね」
返事の代わりに、クローディアが涙ながらに頷いたその時。地を蹴る蹄の音と馬の嘶《いなな》きが、こちらへ近づいてくるのが分かった。
振り返ると、皇宮の方角から数頭の馬が駆けてきている。先頭にいる人影を見て、クローディアはドレスを翻した。
「───クローディアッ!!」
駆けつけてきたのはエレノスと十数名の騎士だった。
エレノスは馬から飛び降りると、クローディアの身体を掻き抱いた。それと同時に、下馬した騎士たちがすぐさま周囲を取り囲む。