死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる
血を流しすぎたのか、蒼白な顔で苦しげに呼吸をしているアルメリアは、駆け寄ってきたクローディアを見ると口元だけで笑んだ。
「………よかった。お守りできて」
ふう、とアルメリアは息を吐く。泣き出したクローディアの涙を拭いたいのか、手を伸ばしたが──寸前のところで沈んでしまった。
アルメリアは自身を抱き止めてくれたエレノスに目を移すと、眩しそうに目を細めた。
「……もう一度お会いすることができて、よかった」
自分の腕の中にいる少年は、今日初めて会う人だ。だというのにまた会えて嬉しいと笑う少年の名を、エレノスは知っていた。だが口にすることはできなかった。
本来ならばここにはいるはずのない存在だから。
「……あちらの世界の私は、過ちを犯していないだろうか」
アルメリアは頷く代わりに一度だけ瞬きをすると、この上なく幸せそうに笑った。それが答えのようだ。
「……、………」
アルメリアの唇が動く。それが母上、と奏でようとしていたのを涙ながらに見ていたクローディアは、アルメリアの頬に手を添え、目一杯笑った。
「逢いにきてくれてありがとう…。愛しているわ、アルメリア」
あいしている。その言葉を贈られたことが何よりも嬉しかったのか、アルメリアはほんのひとときだけ目を見張ると、菫色の瞳から涙を零し、そうして瞼を閉ざした。
その瞬間。その一瞬、辺り一面が光に包まれた。目を開けていられない強い光に、誰もがぎゅっと目を閉じて、瞼の向こうが鎮まるのを待った。
そして、目を開けた先。そこに白銀色の髪の少年の姿は跡形もなく、兄妹の膝元に一輪のアルメリアの花が残されているだけだった。