死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる


その日の夜明けに、帝国の東方で三本の狼煙が上がった。それは帝国内では休戦、もしくは停戦の時に用いられる合図である。

大軍が現れたという報せが城に届いて直ぐに、皇帝はラインハルトを総指揮官として軍を向かわせたが、王師が国境に着くよりも先に、ロバート領にいる太皇太后の命で動いた皇弟ローレンスの軍が敵と対峙した。

四国の大軍と帝国の軍は衝突すると思われていたが、敵の総指揮を執っていた王国の軍が急遽退去したことにより、開戦することなく事は終わった。


帝国の皇帝ルヴェルグ一世は、平和同盟を反故にした北方の三国に使者を送り、此度は赦すが次はないという旨を記した直筆の書状とともに髑髏を送りつけ、北方三国の君主の背筋を凍らせたという。


事件の翌日の午、皇女の夫君であるヴァレリアンが、王国の国王ロイスチェラムと共に帝国に帰還した。

王太子フェルナンドとヴァレリアン王子の父であるロイスチェラムは、歴戦の英雄のような強面の男だった。

「──此度は愚息が赦し難い事を起こし、帝国の民を不安にさせてしまったこと、心よりお詫び申し上げます」

皇宮に到着するなり、ロイスチェラムは王冠を外して額が床に着く勢いで詫びた。

「私の首と、愚息を産んだ女一門の首だけでは足りぬでしょうが、どうか、どうか我が国の民と、ヴァレリアンの命だけはお救いください」

「……顔を上げよ、ロイスチェラム国王」

ルヴェルグの声に、ロイスチェラムはゆっくりと顔を上げる。その眼差しからは深い哀しみと、強い信念のようなものが感じられた。
< 329 / 340 >

この作品をシェア

pagetop