死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる


ふ、と。諦めたような、切ない微笑を浮かべたロイスチェラムは、リアンからルヴェルグへと身体ごと向き直った。

「……ルヴェルグ皇帝陛下。先ほど申し上げました通り、王国の正統な王位継承者はヴァレリアンです」

話すことはできないと言っておきながら、ルヴェルグの前で己の罪を明かしたロイスチェラムに、ルヴェルグは何も言わなかった。

罪を犯した者の父親であるというのに、縛ることも痛めつけることも、強いることすらしないルヴェルグに、ロイスチェラムは深々と敬意を表するように首を垂れる。

「身勝手ではございますが、私は本日を以て王座を返還いたします。正しき王に」

「……ヴァレリアン殿下が拒んだら、どうするつもりだ」

「その時はアウストリア帝国の皇帝陛下に。どうか廃れた我が国を、お導きください」

「勝手なのは親子共々だな。王でありながらその責務を全う出来なかったから、息子と他国に全てを投げるとは。…私は暇ではない」

だが、と。ルヴェルグは何かを言いかけると同時に立ち上がると、困惑に沈んでいるリアンの傍へ寄った。父子の間に立つと、凪いだ表情で口を開く。

「ロイスチェラム国王。国教会の解体、及び王妃一門の国外追放を条件に、我が国は貴国を統治しよう。だがそれは、ヴァレリアン殿下の苦しみが癒えるまでだ」

「………陛下」

「積年の苦しみや痛みというものは、その原因となったものが消えたとしても…癒えるものではない。突きつけられた真実を黙って受け入れ、前を向ける者などそういないだろう。私だってそうだ」

リアンが非道な扱いを受けていたのは、フェルナンドと教会が共謀したことによるもの。かの国王が神となれ崇められていたのは、そうしなければ消すことができない罪を犯した者がいたから。

ルヴェルグはロイスチェラムの告白からそれらを読み取り、理解すると同時に、何も語らなくなったリアンを想った。どれほど辛く、悲しかったことだろうか。
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