死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる

「──何? クローディアが?」

夜が深まった頃、エレノスとローレンスはルヴェルグの部屋を訪れ、昼間のクローディアのことを話していた。

突然ローレンスを訪ねるなり大泣きをしたこと。何故かオルヴィシアラのことを言っていたこと。エレノスに訊かれても何も答えられなかったこと。

アンナは怖い夢を見た所為だと言うが、淑やかな皇女が悪夢を見たくらいでパジャマで外に出るだろうか。

「ディアは話したくないようでした。あの様子からすると、口にするのも恐ろしい夢を見たのだと思いますが」

「…ふむ。そうか…」

ルヴェルグは手に持っていた書類を置くと、棚に背を預けるようにして月を見上げているエレノスに向き直る。

「ディアに何があったのかは分からないが、くれぐれも無理強いはしないように。…来月は建国千年目を祝う式典がある。ディアが万全の状態で出られるよう、配慮をしてやってくれ」

「勿論ですとも。兄上」

ローレンスは深々と頭を下げると、賓客のリストを手に部屋を出て行った。未婚の女性の名前があるかチェックをすると言っていたが、新たな貿易がしたいと言っていたから、よい商人を抱えている貴族の名をリストアップするのだろう。

「さて、私は寝るぞ。…エレノス、ディアが元気になるよう、気晴らしに城下の祭りにでも行くよう勧めておいてくれ」

エレノスは頷いた。人混みが苦手な妹がそれで元気になるとは思えないが、部屋にいるよりはいいだろう。

「はい、分かりました。…ではまた、何かありましたらお知らせいたします」

「ご苦労だった。ゆっくり休め」

パタン、とルヴェルグの部屋のドアが閉まると同時に、部屋の外に出たエレノスは、クローディアの部屋がある方角を見つめた。

生まれてから今日まで誰よりも傍にいた自分には、どんなことでも打ち明けてくれていたというのに。

「…何があったんだい、ディア」

寂しさを感じるエレノスは、ゆっくりとした足取りで部屋に戻っていった。
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