死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる
* ── * ── *

ふと、誰かに名前を呼ばれた気がしたクローディアは、ゆっくりと目を開けた。しかしそこは辺り一面が真っ暗で、どこまでも闇が広がっている。

頭の半分はまだ温かい泥のような、無意識の領域に留まっている。それを振り払うように身体を起こすと、目の前に大きな光が灯った。

『母上』

クローディアは眩い光の中に佇む人影を見て、はっと息を飲んだ。そこには銀髪の少年が居たからだ。

『やっとお会いできましたね』

会えて嬉しい、と微笑むこの少年は何者なのだろうか。たった今母と呼ばれたことから、答えは自ずと分かる気がした。

『…貴方は、アルメリア?』

クローディアの問いかけに、少年の瞳が揺れ動いた。そうして小さく頷くと、クローディアの横に腰を下ろし、菫色の瞳を柔らかに細めた。その横顔は、大好きな兄──エレノスによく似ていた。


これは夢だ。厳重に警備されているあの部屋から、クローディアを連れ出せる人間などいないのだから。だとしたら、どうしてこのような夢を見ているのだろう。

『母上、よく聞いてください』

アルメリアは真剣な表情でクローディアの手を取ると、顔を覗き込むようにして口を開く。

『母上の死後、私は帝国で育てられました。伯父上たちは優しく、私を慈しみ、とても大切にしてくださいました。…ですが、母上の死をきっかけに再び大きな戦が起きたのです』

『私の死で…? なぜなの?』

アルメリアは長いまつ毛を伏せると、私の手を引いて歩き出した。すると、真っ暗闇だった世界に色がぽつぽつと浮かび上がり、やがてそれらは地上を映し出した。
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