死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる
『母上を死に追いやった王国を、ルヴェルグ伯父上が許さなかったのです。それに対抗するように、今まで大人しくしていた反帝国派が同盟を結び、帝国と激しく衝突しました』
『……ルヴェルグお兄様が…?』
『はい。たくさんの人が死にました。それらを私は、ルヴェルグ伯父上の腕の上から眺めることになりました。……とても辛かった』
ルヴェルグは戦乱の世を終わりにした人だ。しかし、クローディアはそれが如何にして終わったのかは分かっていなかった。
幼き頃に出陣を見送ったことはあるが、戦というものは見たことがない。それがどのようなものなのかは本から得た知識だけだ。
『私は神に願ったのです。もしも神がいるのなら、母上が生きる世界を返してください、と』
だからクローディアは、目を醒ましたらあの場所に居たのだろうか。王国に嫁いで死んだはずの自分が、嫁ぐ前に時が戻っていた。
それはアルメリアが神に願い、そして神が叶えたからなのだろうか。そう問いかけるようにアルメリアの目を見つめると、その菫色の瞳からは透明な雫がこぼれていた。
『私の身勝手な願いで、母上の時間を巻き戻してしまい申し訳ございません。…母上に会えてよかった』
『アルメリア…』
『どうか、母上のことを心から愛し、慈しんでくれる方と幸せになってください。…父フェルナンドのような男とはもう、二度と歩まれませぬよう』
そう言うと、クローディアの世界は眩しい光に包まれた。
アルメリアの姿はもう透けており、触れようと手を伸ばしても宙を掻く。
クローディアはやっと逢えた息子の身体を抱きしめることができないことに、息が詰まりそうになった。
自分のいない世界で、こんなにも立派になっていたこと、兄たちが育ててくれたことを知って、胸が温かくなった。けれど、アルメリアはそれを伝えにきたわけではないのだ。
アルメリアは時を戻したと、神に願ったと言った。そしてクローディアがフェルナンドに嫁がない道を歩んでいくと、アルメリアには出逢えないことになる。
そうまでしてでも、守りたいものがあったから──こうして逢いにきてくれたのだ。
『…私の愛しい子。逢いにきてくれてありがとう』
クローディアのその言葉にアルメリアは目を見開くと、花開くような笑顔を浮かべ、光とともに消えていった。