死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる
「元気ならいいんだ。…悪夢を見て泣いた日から、部屋で過ごすことが多くなったと聞いたんだが、どんな夢を見たのか話すことはできるかい?」
悪夢を見て泣いた日とは、あの夢から醒めた日のことだろう。大好きな家族と過ごしていた頃に戻ってきたことに安堵して、人の目も気にせずに泣きじゃくってしまったが、まさかそのように話が伝わっていたとは。
そんなことを考えていると、不意に兄と視線が交わった。
何か言わねばと口を開いたが、出てきたのは声ではなく涙だった。
「…ディア?」
あの子と同じ、菫色の瞳。胸元くらいまである艶やかな銀色の髪、抜けるような白さの肌。
母を喪った日から私にはこの人がいたけれど、あの子の傍には誰がいてくれたのだろう。
「…泣かないでおくれ、クローディア」
何か熱いものが滑り落ちる頬へと兄の手が添えられる。その柔い温度に声を上げて泣きたくなってしまった。
── 『私の身勝手な願いで、母上の時間を巻き戻してしまい申し訳ございません。』
クローディアはエレノスの腕の中で啜り泣いた。
今この瞬間は奇跡なのだ。触れることも、その姿を見ることさえ叶わなかった息子が起こしてくれたもの。エレノスにそっくりだった我が子がくれた贈り物。それをこの部屋で時が過ぎ去るのを待とうとしていた。
こうしてまた家族の元に帰ってこれたのだ。息子が言っていた未来にしないために、できることをやらなければならないのに。