死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる
「…とても、とても怖い夢を見たんだね。思い出させてすまない」
「いいえ、いいえっ…! こうしてお兄様が居てくれるから、いいの」
エレノスの声にクローディアは何度も頭を振った。もう悪夢を──あの辛い日々を送ることはないのだと自分に言い聞かせる。
「夢は夢でしかない。その辛い記憶が薄れるよう、新たに思い出を作って上書きをしよう」
果たしてそんな日が来るのだろうか。目を閉じるだけで鮮明に思い出すというのに。
クローディアが顔を曇らせたのを見て、エレノスは「そういえば」と呟く。
「城下では明日から祭りがある。明日は建国千年祭の前夜祭で、城下では様々な催し物があるから、アンナと共に気晴らしに行くといい」
帝国は今年で建国千年目を迎える。戦なき平和な世となった今、国を挙げて盛大に祝われることだろう。
城の外に大切な妹を出すのは心配で堪らないが、皇宮の中にいては知ることのできない世界を見聞きすれば気が晴れるはずだ。
そう考えたエレノスは妹の背中を押すように柔らかに微笑みかけた。
「お兄様は一緒に行ってくれないの?」
「私は明日オルシェ公と使節団をお迎えしなければならなくてね。…夕方には戻るから、ローレンスも呼んで皆で一緒に夕食を頂こう」
ひと月ぶりに夕食を囲むね、とエレノスは嬉しそうに言ったが、クローディアにとっては数年ぶりのように感じられた。
クローディアは、この温かな日々に戻ってきたのだ。