死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる
「──離してぇっ!!」
クローディアが居た場所から四つほど建物を通り過ぎたところにある路地裏に、声の主人はいた。
そこには子供が二人、大人の男が一人いた。見たところ泣いている子供を庇う男の子を男が怒鳴りつけたようだが、その手には太い棒が握られている。
それを見たクローディアは子供に駆け寄ると、小さな身体を自身の背に隠した。
「おやめなさい。こんな子供に何をしているのですか?」
突然現れたクローディアを男は物凄い形相で睨みつけると、足元に唾を吐き出した。
「あんたには関係のないことだ。どこのお嬢さんかは分からねえが、痛い目に遭いたくなかったらそこを退きな!」
振り上げられた棒を見て、クローディアは瞬時に子供を抱きしめて目を瞑った。
大丈夫、見回りをしている騎士が気づいて、きっとすぐに駆けつけてくれる。
そう信じて、痛めつけられるのを覚悟していたが、男の手に握られていた棒は呻き声とともに地面に転がり落ちていった。
「──ねえ。いくらなんでも無謀すぎない?」
凛とした声が頭上に降る。その声に閉じていた瞼を上げると、闇色が視界を覆った。
はたはたと風で揺れるそれはマントのようだ。足元にはシンプルなブーツ、紺色のズボン、白いブラウス。確かめるように上へ上へと顔を上げていくと、青い瞳とぶつかった。
「──っ…」
その青は、クローディアのことを大切にすると言っておきながら、暗がりに閉じ込め不幸にした男の目と同じ色だった。