死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる
クローディアは目を大きく見開いたまま固まっていた。
目の前にいるのはあの男ではない。危ないところを助けてくれた恩人だ。なのに何故身体が凍りついたように動かないのだろう。
そんなクローディアを余所に、黒いロングマントを羽織る恩人はクローディアの前にしゃがみ込むと、そっと手を差し出した。
「…怪我はない?」
そう優しく声をかけた瞬間、強い風が吹き荒れ、クローディアに手を差し伸べた少年が被っていたフードが舞い上がった。
「……あ…」
青い瞳の恩人は、まばゆい金色の髪を持つ少年だった。髪は肩の辺りで切り揃えられており、声を聞かなければ少女と見間違える容姿をしている。
兄ルヴェルグ以外で初めて金髪の人を見たクローディアは、吸い込まれるように見入ってしまっていた。
「……あの、俺の声聞こえてる?」
端正な顔がクローディアの目の前に来る。突然のことに驚いたクローディアは、そこでようやく我に返った。
「ごめんなさい、思わず見惚れてしまって。…あの、助けてくれてありがとう」
話せる状態であることに安心したのか、少年は緩々と口元を綻ばせると、クローディアをゆっくりと立ち上がらせた。
「怪我がないならいいんだけど。…いくら子供が危ない目に遭っていたからって、無茶すぎ」
「……そうよね。もう少し丈夫な格好で来ればよかった」
「は? いや、たとえ鎧で来たって、丸腰じゃ無理でしょ」
素っ頓狂な返答をするなり控えめに笑ったクローディアを見て、少年はやれやれといった風に肩を落とすと、子供の目の前で膝をついた。