一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】
「地方に転勤になっちゃって、それからしばらく会えてないんだよね」

「……転勤、ですか」

てっきり、前に聞いたときは亡くなった人、という意味だと思っていた。
カイトさんとは別の人の話だったのか。

「飛行機代もかかるし、仕事も忙しいみたいで、そうなると仕方ないよね。
律くん達の結婚式にはどうにか来ると思うけど。
あ…今日って確か、前撮りの日だ」

「律さんと七海さんの前撮りって、今日だったんですね」

だから、クロエさんはいつもよりもフォーマルな感じだったのか。

どうして前撮りだって言わなかったんだろう。
それどころじゃないくらい、やっぱりなにかあったんだろうか……。

「たまたまだけど、今日が初めて律くんに会った日だから嬉しいって、七海さんが言ってた気がする」

「すごくタイミングが良かったんですね。
そういえば、お二人ってどこで知り合ったんですか」

「クロエくんの家でのパーティーだよ。
ナナくんが七海さん連れて来て、クロエくんが律くんを。
まさか結婚するとは思わなかったけど」

「縁って、どこにあるかわからないものですね」

この頃、特にそう思うようになった。

少しでも違っていたら、クロエさんには出会えなかったから。
クロエさんと出会っていなかったら、姫野さんともこうして会ってはいない。
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