一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】
「律くんって七海さんと出会ってから、前よりよく話すし、笑うようになったんだよね。
前はもっと、クールな一匹狼っぽさがあったのに。
フローリストになったのも、七海さんに背中を押されたみたいだし」

「七海さんが律さんに、いろいろと影響を与えたんですね」

「うん。七海さんも花関係の仕事だからね。
でも、律くんが婿になるのは意外だったな。
嫁に来い、とか言いそうなのに」

確かに律さんのイメージ的にはそんな感じがする。

「今は佐藤だけど、旧姓は珍しい名字だったんだよ。
カイトっていうの」

「……カイト?」

「海の音、でカイトっていうんだよ。旧姓は、海音(かいと) 律」


つい、カイトという名に反応してしまう。

クロエさんが好きだったカイトさんとは関係ないのに。

カイトさんは亡くなってしまったんだから……。


「綺麗な名字ですね。羨ましい」

「だよね。なのに結婚したら、カイトじゃなくて律って呼んで欲しいって言いだして」

「友達なら旧姓で呼んでも、おかしくはないですよね」

「そうだよね。
でも、気持ちを切り替えたいからカイトって呼ぶなって、けっこう強く言うから。
もう誰もカイトって呼んでないと思う」


「………クロエさんは律さんを、カイトって…呼んでいましたか?」


「うん。結婚するまではカイトって呼んでたよ。
結婚してからは、律って呼ぶようになったけど」



これは……ただの偶然?
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