一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】
カイトなんて名前、そんなにたくさんいるとは思えない……。


律さんと俺は、ほとんど身長が同じで……。
律さんは男性にしたら肩幅も広くはなくて……。


死んじゃったと言ったのは、過去のカイトさんはいない…という意味だった?

律さんがカイトさんだとしたら、家を出る時にクロエさんの様子がおかしかったのも……。


考えれば考える程、納得がいってしまう。


「ナナには笑ってた」と言ったのは、七星さんと俺の事を、七海さんとカイトさんに重ねてた?

「共通点があればいいの?」と言ったのは、同じ様に花に関する仕事をしている律さんと七海さんの事?

グラジオラスの花言葉も、律さんから聞いたのかもしれない……。



律さん達が来る前、離れに行って、ぼんやりともしてた。
そしてその後に……抱き締めてきた。

七星さんや七海さんが呼びに来ても………どうでもいい、と言って。


パーティーの後、突き放す様に家を出て、それからまともに家に帰らなかった。
いろいろ考えてしまって、離れでした以上の事をしそうだから、って……。

それは目の前で、律さんと七海さんの姿を見たから?

二人を見た後ではなにをしてしまうか、わからないから?



……すべて、辻褄が合ってしまう。





そこから姫野さんと話した内容も、どう帰ったのかも、あまりよく覚えていない。

頭の中は、あのパーティーの日のことがぐるぐると回っていた。


あの日、クロエさんはどんな顔をしていた?

あの日、クロエさんはどんな想いをしていた?


なにも出来ないけれど、気付きたかった。

クロエさんが、パーティーの前日にキッチンで30秒間、抱き締めてくれたみたいに。
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