一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】
「アオイ?どうしたの?」

腕を(ほど)いてクロエさんを見つめると、クロエさんは狼狽(うろた)えていた。
良かった……壊れるような笑顔よりは、よほど良い。

人と人は7秒間見つめ合うことで恋が始まるというけれど、俺とクロエさんではどうだろう。

7秒間見つめ合って、関係は変わる?


恋に落ちてくれなくても良い。

自分を好きじゃなくても良い。

カイトさんの……律さんの代わりだって良い。

なんだって、良いから。

クロエさんの、そばにいたい。


そう思いながら二回目のキスを、自分からした。


唇を離して瞼を開くと、クロエさんはやっぱり困った顔をしていた。
いつもとは逆だった。
いつもは俺が困ったり、狼狽えて、クロエさんはまったく動じていなくて……。


「帰ったら褒めて、とは言ったけど……」

褒めるとか、そんな意味じゃない。
頑張ってなんて欲しくない。
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