一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】
もう一度、ゆっくりと唇を重ねると、クロエさんは上唇を咥えるように口づけを返した。

くすぐったくて肩を揺らすと、今度は下唇を音を立てながら咥えられた。

その感触がとても気持ち良くて、自分からも同じようにクロエさんの下唇を咥えた。
上手く出来なかったけれど、それでもクロエさんは褒めるように髪を撫で、また唇を咥えてきた。

徐々に唇は、吸ったり、甘噛みされていく。
我慢出来ずに息が漏れてしまったけれど、今日はそんな事よりも、もっと唇を合わせたくて仕方がなかった。

自分からも、クロエさんの柔らかな唇に何度も唇を重ねた。

「嫌になったら、オレに爪を立てて。
言葉で言われても、きっと耳に入ってこないから……」

その言葉に少しだけ躊躇(ためら)ってから頷くと、クロエさんは首に手を回し、唇の間から舌を押し入れた。
驚いて身体を固くすると、片手を背に回され、優しく撫でられた。

口内で動く舌に、どうしたら良いのかわからない。
自分も同じ様に動かすべきなのか、任せるべきなのか、どっちが正しいんだろう。

しどろもどろに少しだけ舌を動かすと、クロエさんは唇を離した。
交じり合った唾液で、お互いに唇は濡れていた。

「何もしないで良いから、目を閉じないで」

目を合わせたまま、こんなキスなんて出来ない。
首を横に振ると「閉じないで」と言われ、唇を重ねられた。
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