御曹司の溺愛から逃げられません
「そろそろおやつにするか? 次の目当ての店に行こう」
気がついてみれば2時間を過ぎていた。
私がチラッと視線を向けたお店に瑛太さんは気がつきすぐに入ってしまう。そして悩んだものは買おうとしてしまうので何度止めたことか……。それでも結局いくつも買ってもらってしまった。
瑛太さんはどうしてこんなに良くしてくれるのだろう。
思わず立ち止まってしまうと彼は振り返り、微笑んで私に手を差し伸べた。
「疲れたか?」
思わず頷き、その手をとってしまいたくなるがぐっと堪え、自分の手をぎゅっと握った。
「大丈夫です。さ、行きましょうか。次は焼き菓子が美味しいところなのでそこで買って、パン屋さんに行きたいと思います」
「じゃ、パン屋で少しお茶にしようか」
「はい」
彼は差し出した手をさりげなく下げると横に並んだ私の背にそっと当てた。
この手の暖かさに胸が苦しくなり、目元に涙が溢れてきた。
彼に気付かれないようさっと手で拭うと明るい声を出した。
「凄く美味しい焼き菓子なんですよ。年に2度、1ヶ月単位で休みになってしまうんです。職人さんたちみんなで海外研修に行くんです。常に向上心を持った職人の集まりなんですよ」
「へぇ。それはすごいな。でもその間ここのお菓子は食べられなくなるってことなんだろう?」
「そうですね。でも妥協しないお菓子に対する情熱で周りも納得してるって感じです」
仕事にここまでの情熱が注げて少し羨ましい。私は仕事が好きだが、それでもやはり営業マンには雑用係のように扱われる。同僚の女性からも何故か仕事を押し付けられがち。でも誰かがやらなければならないし、嫌いじゃない。けれど今の仕事にそこまでの情熱でやれているかと言われれば否だ。ここの職人の話を聞くたびに考えさせられる。誰かのサポートは嫌いじゃない。ただ、もっとやりがいを感じたい。
気がついてみれば2時間を過ぎていた。
私がチラッと視線を向けたお店に瑛太さんは気がつきすぐに入ってしまう。そして悩んだものは買おうとしてしまうので何度止めたことか……。それでも結局いくつも買ってもらってしまった。
瑛太さんはどうしてこんなに良くしてくれるのだろう。
思わず立ち止まってしまうと彼は振り返り、微笑んで私に手を差し伸べた。
「疲れたか?」
思わず頷き、その手をとってしまいたくなるがぐっと堪え、自分の手をぎゅっと握った。
「大丈夫です。さ、行きましょうか。次は焼き菓子が美味しいところなのでそこで買って、パン屋さんに行きたいと思います」
「じゃ、パン屋で少しお茶にしようか」
「はい」
彼は差し出した手をさりげなく下げると横に並んだ私の背にそっと当てた。
この手の暖かさに胸が苦しくなり、目元に涙が溢れてきた。
彼に気付かれないようさっと手で拭うと明るい声を出した。
「凄く美味しい焼き菓子なんですよ。年に2度、1ヶ月単位で休みになってしまうんです。職人さんたちみんなで海外研修に行くんです。常に向上心を持った職人の集まりなんですよ」
「へぇ。それはすごいな。でもその間ここのお菓子は食べられなくなるってことなんだろう?」
「そうですね。でも妥協しないお菓子に対する情熱で周りも納得してるって感じです」
仕事にここまでの情熱が注げて少し羨ましい。私は仕事が好きだが、それでもやはり営業マンには雑用係のように扱われる。同僚の女性からも何故か仕事を押し付けられがち。でも誰かがやらなければならないし、嫌いじゃない。けれど今の仕事にそこまでの情熱でやれているかと言われれば否だ。ここの職人の話を聞くたびに考えさせられる。誰かのサポートは嫌いじゃない。ただ、もっとやりがいを感じたい。