御曹司の溺愛から逃げられません
月曜日。
いくら反対しても瑛太さんに聞いてもらえず、私は彼の車で一緒に出勤した。
会社のそばで下ろしてくれるようお願いしたが、エントランス前で1番目立つところでわざと私を下ろした。
私は下を向き、小走りでゲートを抜けると一目散にエレベーターに乗り秘書課へ向かった。

「おはようございます」

一歩踏み入れるとすでに室長やメンバーは揃っており笑顔で迎えられた。

「上手くいって良かったわ」

立川さんが声をかけてきた。
彼女の采配で私たちはよりを戻したことになるので全て知られていると思うと物凄く恥ずかしい。

「2人とももどかしかったのよ。この前私とランチに行った時も泣きながら社長には釣り合う女性と結婚して欲しいなんて言ってたからちょっとだけ手伝っちゃった」

その言い方があまりに可愛らしくて私の強張った頬が少し緩んだ。

「泣いたのは仕事を褒められたからです。見ててくれる人がいた、と嬉しくなって」

「もちろん仕事はきちんとしているし、なにより気配りがいいと思っているわ。でも社長にはあなたが必要だとみんなで思ったから背中を押したの」

秘書室にいるみんなは立川さんに同意する様に頷いていた。

「私たちも社長が柴山さんを見る視線にいつも気がついていたわ。なんだか社長が不憫で手伝ってあげたくなっちゃったの」

立川さんの言葉を後押しするように他の人からも言われる。
みんなの気持ちに胸が熱くなっていると、背中からぎゅっと抱きしめられた。

「おはよう。みんな俺の香澄をいじめてるのか?」

軽口を叩きながら私に遅れること5分、彼は秘書室へ入ってきた。

「おはようございます、社長。この2人の様子だとうまくいったんですね。良かったです。ま、昨日のパーティー会場での様子を見る限り大丈夫だと思ってましたけどね」

室長には昨日の様子を見られていたんだと思うと恥ずかしさがさらに込み上げてきた。あんなに人が多い中、端の方だとは言え、自分の会社の社長を見失うわけないない。だからずっと見られていたと考えただけで穴があったら入りたくなった。

「香澄にプロポーズしてOKをもらった。これからみんな忙しくなるからよろしくな」

彼はそのセリフを残すと、自分の部屋へといってしまった。
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