御曹司の溺愛から逃げられません
「プロポーズ受けたの?」

秘書室のみんながざわめきたち、仕事どころではない。
みんなの視線が私に集まり、私の言葉を待っていた。

「はい……」

キャーッという悲鳴にも、歓声にも聞こえる声が秘書室に響いた。
流石に室長に諌められ、慌ててみんな口に手を当てていた。
口々におめでとうと言われ、こんな私なのに受け入れてもらったのだと心の底から嬉しく思った。

その後、午前中はいつも通りルーティンワークをこなすとお昼休みになった。
瑛太さんは社長室から出てくると真っすぐ私のデスクへやってきた。

「香澄、ご飯に行こう」

「え? 仕事中ですよ。公私混同はダメです」

「そうだよな。でも今は昼休みだ。きちんと俺は分けている」

「でもまだ私の仕事は終わってません。キリのいいところまで済ませるので社長はお先にどうぞ」

私がそう伝え、パソコンに視線を落とすと周りからはクスクスと笑い声が聞こえてきた。
顔を上げるとみんな社長の顔を見ながら笑っていた。

「残念ですが、社長はお先にどうぞ。柴山さんはもう少ししないと入らないようですので」

室長に間をとりもたれ、渋々社長は外に出ていった。

「柴山さん凄いわ。結婚するなら仕事はどうなるのかと思っていたら一刀両断だったわね。社長は呆気に取られてたけど」

「仕事は仕事ですから。会食でもないのに、社長に合わせて食事に行くことはできませんから」

「うんうん。柴山さんっぽい」

妙に納得した顔の立川さんが何度も頷いていた。
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