スパダリの秘密〜私の恋人はどこか抜けている〜
「今夜もするだろ」
「っ、ほんと変態! 性欲おばけ!」
「それって誉め言葉?」

 有紗としては盛大の悪口を叩きつけたつもりだったが、慶汰は嬉しそうに笑っている。
 慶汰は人と比べてちょっとばかし性欲が強いところがあり、ほぼ毎晩のように体を重ねているのだ。

 冷静に考えれば寝不足で翌日に支障をきたしそうなのに、逆に調子が出てしまうものだから、有紗も全面的に拒否はできなかった。加えて、有紗自身も求められるのは嫌ではなかったから。

(人の気も知らないで……)

 いきなり求められて上昇した体の熱は冷めやらぬまま。慶汰のあとを追ってリビングへと向かった。



 二人用のダイニングテーブルに用意されていたのは鍋焼きうどんで、慶汰は「のびちゃったかも」と悪びれもなく笑う。

 しかしながら、有紗は体型を気にしているので、うどんは半玉。伸びたくらいがかさ増しされてちょうどよかったが、正直に言うのは悔しくて黙って手を合わせた。

「ん……美味しい」

 くたくたに煮込まれた具材は胃に優しく、優しいかつおだしが食欲を増進した。

(慶汰さんって何気に料理もできるんだよな。でも……)

 たまたま見つけた明らかにサイズ感の違うネギを箸で掴む。上手く切り落とされなかったそれは、うどんの如く長い。

「ねえ、これ長すぎだよ」
「本当だ。今日たまたま早く帰れたから、俺が作ってあげようと思ったんだけど。やっぱり有紗が作ったほうが安心感があるな」

 仕事柄、二人とも帰宅時間が遅い上に飲み会も多く、平日は一緒に夕食をとる機会が少ない。それでも早く帰れたときは、お互いに作るようにしていた。

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