Better late than never〜失った恋だけど、もう一度あなたに恋してもいいですか?〜
2 再会
出勤した芹香は、常務である兄に確認してもらうための書類を持って席を立つ。すでに一人暮らしをしている兄とは会社では顔を合わせるものの、帰宅後は業務連絡をするくらいだった。
急ぎではない案件だし、本来ならばメールでもやりとりが出来そうなものだったが、急に常務室に呼ばれたことに、少しの疑念が湧き起こる。嫌な予感がし、胸がざわつくのを感じていた。
常務室の前に立ち、不安を取り除くように大きく深呼吸をする。それからノックをして、
「失礼します」
と言いながら部屋へと足を一歩踏み入れた。
すると机の前に座ってパソコンを操作している人物が目に入る。常務室にいるのだから、それが兄だと思うのは当たり前だろう。
「おはようございます。頼まれていた資料をお持ちしました」
そう言いながら机の方へ近付いていった芹香は、机の前にいた人物と目が合った瞬間、心臓が止まったような感覚に陥った。息が止まり、胃がキリキリとしめつけられる。
しかしそれは相手もおなじだったようで、目を見開いて固まったかと思うと、すぐに笑顔を浮かべて芹香を見つめた。
「芹香さんじゃないですか。お久しぶりです。お元気にしていましたか?」
誠吾はあの頃と変わらず端正な顔立ち、眼鏡の奥の瞳はどこかクールな印象を与える光を帯びており、グレーの細身のスーツと同型色のストライプのネクタイからは、警察官として働いていた頃とは違うスマートさを感じる。
どうして彼がここにいるのだろう──芹香がホームパーティーの不参加を始めてから約一年。その間彼と会うことはなかった。
突然のことに言葉を失った芹香だったが、深呼吸をしてからゆっくりと気持ちを落ち着かせる。その間に笑顔を顔に貼り付けると、剥がれ落ちないよう気を付けながら口を開いた。
急ぎではない案件だし、本来ならばメールでもやりとりが出来そうなものだったが、急に常務室に呼ばれたことに、少しの疑念が湧き起こる。嫌な予感がし、胸がざわつくのを感じていた。
常務室の前に立ち、不安を取り除くように大きく深呼吸をする。それからノックをして、
「失礼します」
と言いながら部屋へと足を一歩踏み入れた。
すると机の前に座ってパソコンを操作している人物が目に入る。常務室にいるのだから、それが兄だと思うのは当たり前だろう。
「おはようございます。頼まれていた資料をお持ちしました」
そう言いながら机の方へ近付いていった芹香は、机の前にいた人物と目が合った瞬間、心臓が止まったような感覚に陥った。息が止まり、胃がキリキリとしめつけられる。
しかしそれは相手もおなじだったようで、目を見開いて固まったかと思うと、すぐに笑顔を浮かべて芹香を見つめた。
「芹香さんじゃないですか。お久しぶりです。お元気にしていましたか?」
誠吾はあの頃と変わらず端正な顔立ち、眼鏡の奥の瞳はどこかクールな印象を与える光を帯びており、グレーの細身のスーツと同型色のストライプのネクタイからは、警察官として働いていた頃とは違うスマートさを感じる。
どうして彼がここにいるのだろう──芹香がホームパーティーの不参加を始めてから約一年。その間彼と会うことはなかった。
突然のことに言葉を失った芹香だったが、深呼吸をしてからゆっくりと気持ちを落ち着かせる。その間に笑顔を顔に貼り付けると、剥がれ落ちないよう気を付けながら口を開いた。