Better late than never〜失った恋だけど、もう一度あなたに恋してもいいですか?〜
「今日は引き受けてくれてありがとうございます」
「いえ……父の会社に関する大事な調査なんですよね? それなら協力するのは義務のようなものですから。それで……具体的に私は何をすれば良いのでしょうか。このままだと本当に立ってるだけになってしまいます」

 すると誠吾は真面目な顔になり、ロビーを行き交う人々の姿に目を凝らす。その中には二人が知っている顔もあり、これからパーティーへと足を運ぶに違いなかった。

「……ある程度の証拠は固めましたからね。あとはその人物が妙な動きを見せる前に、ボロを出すのを確実な証拠として収めたいんです」

 そう言うと、さりげなくジャケットの胸ポケットを芹香にだけ見えるように開くと、そこにはスティック型のレコーダーが見えた。

「あなたには危険が及ばないよう、細心の注意を払いますから安心してください」

 芹香はゴクリと唾を飲む。もっと簡単な案件だと思っていたが、父も動いていることだし、芹香が思っているよりも大きな事件なのかもしれない。

 そう思うと複雑な心境ではあったが、父の会社のためにも誠吾に協力しなければならないと決心もつく。

「そのためにも、決して私のそばから離れないようにしてくださいね」
「……わかりました」

 その時誠吾は胸ポケットの中へと手を差し入れると、そこから長細い小箱を取り出した。そしてそれを芹香へと差し出す。
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