Better late than never〜失った恋だけど、もう一度あなたに恋してもいいですか?〜
* * * *

 史乃は食べようとしていたパスタを口に含んだ瞬間、大きく目を見開き微動だにしなくなる。

「えっ、ちょっ、ちょっと待って。思考が追いつかないんだけど……もう一回言ってもらっていい?」
「だ、だから! あ、明智さんと……お付き合いすることになりました……!」

 言った途端、芹香は恥ずかしくて両手で顔を覆った。それを見た史乃は興奮した様子で、芹香の肩を叩いてからぐいぐい詰め寄っていく。

「良かったじゃん! とうとう憧れの明智さんをゲットしたわけねー! っていうか、一体何がどうなって付き合うことになったの? はっきり言って、脈なしだったよね」
「うっ、胸が痛い。実は昨日のパーティーでいろいろあって……」

 今日は元々史乃とランチの約束をしていたこともあり、深い事情については話せなかったが、とりあえず付き合うことになったことだけは報告しようと思っていた。

「芹香にとって、初めての彼氏になるんだねぇ。気分はどう?」
「まだ昨日の今日だし、あまり実感はないんだけど……でも明智さんが自分の恋人だって思うだけですごく嬉しい」

 史乃はニンマリと笑みを浮かべると、パスタを口に運ぶ。

「ずっと好きだった人だもんねぇ。恋人同士だと、今までとはまた違った雰囲気になるだろうし、これから楽しみが増えるね」
「そんなこと言われたら、なんかドキドキしてくる……」
「でも芹香は初めてが全部明智さんと経験出来るんだよ。楽しみの方が大きくない?」
「楽しみだけど……失敗したりしないか心配だよ」
「あらら、初々しいなぁ。大丈夫だって、明智さんって十歳上でしょ? 芹香が失敗したって、それすら可愛いって思ってくれると思うけどなぁ」

 その時、ふと頭に昨夜の出来事が思い返される。半ば自棄になって誠吾を押し倒した芹香を、彼は優しく受け止めてくれた。

 芹香は頬が緩むのを感じる。確かに彼なら全てを受け止めてくれるような安心感があった。

「芹香、すごく幸せそう。想いが通じて良かったね」

 嬉しそうに微笑む芹香を見て、史乃も満面の笑みになる。

「うん、ありがとう……」

 彼との関係は始まったばかり。期待と緊張に胸を膨らませながら、平穏な日常が来ることを祈るだけだった。
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