僕の特技は秘密です
遥か昔、椿の住む村の領主の息子には親同士が決めた許嫁がいたのだが、許嫁の娘には好きな男がいたのだ。
それに気づいた許嫁の娘の親がその男に金を渡し娘と別れさせた。

悲しみに暮れいていた娘に追い打ちをかけるように、許嫁がいることを知らない領主の息子は村の娘と恋仲になる。
その後、領主の息子と村の娘が結婚をすることになり、領主の息子と許嫁の娘との縁談は破棄されたのだ。

許嫁の娘は好いた男との仲を邪魔するものがなくなり、喜んで男に会いに行くと、男は既に家庭を持ち嫁と子供ともらった金で幸せに暮らしていたのだ。

自分ばかりが不幸だと思い込んだ許嫁の娘は、悲しみ、恨み、怒りすべてを領主と恋仲になった村の娘に向け、最後には悪霊になってしまった。悪霊となった許嫁の娘は、村に災いをもたらせ、沢山の村人が亡くなったそうだ。

そこで領主の息子と村の娘が協力し、悪霊を封じ込め御霊信仰としてお社を建てたのが秋魂(あきたま)神社の始まりとなった。

その際に帝より悪霊を封じ込めた褒美として呪宝(じゅほう)なる短刀を授かり、再び悪霊が現れた際に村を守れるよう神社に奉納したそうだ。

神社の名前である秋魂(あきたま)の秋はその許嫁の娘の名前であり、彼女の魂が眠る神社だという。

つまり、この神社には悪霊となった秋さんの魂と、呪宝(じゅほう)なる短刀が祀られるそうだ。

子どもの時からこの神社を遊び場にしていた椿だが、悪霊なんて恐ろしいものそばで生活していたなんて想像もせず、聞かされた時はゾッとした。
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