僕の特技は秘密です
「...迷子じゃない。」
「僕の名前はおーすけ。君の名前は?」
「つーちゃんっていうの。」

椿はこの神社の宮司の娘でここに住んでいるので迷子ではないこと。大人たちにいくら話しかけても返事をしてくれないこと。ママが何処を探しても見つからなこと。不安なこと全部『おーすけ君』に話した。

「なら、一緒に探してあげる。」

彼は、女の子の様に可愛いらしい瞳で椿を見つめながら「大丈夫、ママが見つかるまで一緒にいるよ」と優しく言ってくれた。

椿の通う幼稚園の男の子たちはTV番組のヒーローを真似て戦いごっこばかりしており、乱暴なイメージだったが、女の子みたいな容姿の『おーすけ君』は柔らかい印象で何処か安心感があった。

椿は母を探すと同時に、この村の子供ではないという『おーすけ君』に神社を案内したり、一緒に遊んだ。
お気に入りのお花の模様がある池の鯉も教えてあげた。

しかし、ふと気づくと椿はまた一人で神社の鳥居の前に立っていた。

あれ…
『おーすけ君』いなくなっちゃった…。
また、ひとりぼっち…。

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