僕の特技は秘密です

紹介されたアルバイト

旺介の実家は大学に近いので、一人暮らしをせずに実家から通っている。

父親が社長だからといって、馬鹿みたいに広い邸宅に住んでいるわけではなく、間取りは4LDKだった。
ただ、一部屋あたりが広めにできており、旺介の部屋には大きめのソファや、冷蔵庫も置いてありかなり快適に過ごせる様になっていた。

大きめのソファは橘の長身でも横になって足が出ないのと、バスタブはないがシャワールームもあるので、よく寝泊まりをしている。

友達が多い橘なのだが、バイトや用事がない日は大抵旺介と一緒にいた。
付き合いが長い分、旺介だけでなく橘も気が楽な様だ。

そして、今日も橘は旺介の部屋で寛いでいる。

「旺介ってさー、昔、お化け見えるって言ってたじゃんかー。それって、今でも見えんのー?」

…一瞬、まじめな顔したから何かと思えば、突然何だ?

子どもの頃、橘とはよく一緒に登下校していた。
通学路で死亡事故があると良く例のイメージが頭に飛び込んできた。
他にも何かしら強い念の刻まれている所に行ってもだ。
周りに隠していても、ずっと一緒にいる橘には気づかれたので、世間一般の幽霊とは少し違うが、イメージが見えることを伝えていた。

橘は理解し難いそんな話を聞いても旺介と距離を取るわけでもなく、周りに言いふらす訳でもなく、ただ、『そうなんだ。』と返事だけしていた。

それ以来、その話題に触れることは無かったのだが、きっと、その事を覚えていて言っているのだろう。
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