僕の特技は秘密です
「大丈夫ですか??」
落とした鯉の餌を拾おうと橘が近づいた。

つーちゃんは固まったまま、僕を見つめていた。

「え…。あれ?おーすけ君ってあのおーすけ君?そんなはずは…。あっ、えっ?どーゆー事??」

すっかり動転しているようだ。

「お父さーーんっ!!!!きてーーーーっ!!!!」

つーちゃんが僕を見たまま思いっきり叫ぶと、神社の奥から宮司さんが駆けつけていた。

「椿!どーした!?」

宮司さんがつーちゃんに向かって何が起きたのか尋ねる。

「おーすけ君なの!おーすけ君が目の前にいるの!!わたし、また入院してるのー??」

その言葉を聞いて驚いた顔で宮司さんがこちらを凝視した。

「どーゆう事だ…。何かの間違い…、勘違いじゃないのか!?」

取り敢えず話したをしたいと言われ、社務所の奥へと案内をされた。
そこはご祈祷者の待合室の奥にあり、簡単な応接室となっていて、暫くそこに橘と二人きりなった。

「おい、一条、何が何だかさっぱりなんだけど…」
「ごめん橘、僕も良くわからない…。いくら母さんの地元だとしても、父さんの顔は有名だから知られてるかもしれないけど、僕は顔も名前も出してないし…」

5分ほど経つと、宮司さんがつーちゃんと一緒に部屋に入ってきて、僕たちが座る応接セットの向かいに腰をかけた。

つーちゃんと同じ赤い袴の巫女さんがお茶を淹れてくれると、
「お忙しいところ引き止めてしまって申し訳ない。…何から話せば良いのか。」
と、口を開き始めた。
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