僕の特技は秘密です
「椿、彼はお前があの時一緒に遊んでいたと言う男の子に間違いがないのか?」

「えぇ。目鼻立ちなんかそのままだもの。絶対にあの時の男の子!」

つーちゃんは少し興奮気味に言った。

「私はこの子の父親でね。この神社の宮司をしているんだ。伊勢と申します。」

まずは自己紹介から始めてくれた。
なので、僕たちも取り敢えず自己紹介をした。

「実はね、この子は10数年前に交通事故に巻き込まれて母親を亡くしていてね…。この子自身もひと月ほど意識不明の重体だったんだ。それなのにだよ?寝たきりだった1ヶ月、この神社に一人で戻って『おーすけ君』って男の子と一緒に母親を探したり一緒に遊んでたって言うんだよ。『おーすけ君』が心配してるから、退院もしていないのに会いに行くと大騒ぎしてね…。きっと、意識不明の間、夢でも見ていたんだろう。って、病院の先生と話をしていたんだが、『おーすけ君』は夢じゃないって納得してくれなかったんだよ…。母親を亡くしたショック、寂しさで空想の友達を作っているんじゃないかと病院から紹介された児童心理の先生に言われたから、母親を思い出さないように暫く私の実家に預けていたことがあったんだよ…。」

「10数年前なら、きっと僕です。祖父母の家がここから近くて、夏休みだっなのでひと月近く山切村にいました。僕、良くこの神社につーちゃんと遊ぶために来ていて、社務所を訪ねると、いつもいないと断られてましたが…。」
いつも「今は遊べない。」と断られていたのは入院していたからなのだと悟った。
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