僕の特技は秘密です
次の日、父さんに時間を取ってもらい、つーちゃんのお婆さんの施設の取り壊しについてと彼女の状況について相談をした。
もちろん、つーちゃんが僕が幼いころからずっと思い続けている女の子だということも、今日までのことをすべて話した。

僕のプランとしては余生を送るには素晴らしいあの立地を活かし、介護施設自体はそんなに古くないので取り壊しをせずにリフォームを行い、温泉は一般の人も利用可能な、施設入所者の家族が一緒に過ごせる宿泊施設を新たな敷地に設ける。そして、宿泊施設側に商業施設を隣接させるというものだ。
リフォームで済めば転所させる理由もなくなる。

月の華グループは企業として大きくなったので、今後は福祉支援も念頭に置かなければならない。
その一環として老人介護施設に力を入れるという位置づけだ。

「まだまだ抜けはあるが、悪いプランではなさそうだな。」

「じゃぁ、このプランをプロジェクトとして進められる?」

「将来娘になるかもしれない子のためだ。何とかしよう。」

「やった!僕、何でもするよ!明日から社員として出社すればいい?」

「いやいや、旺介はまだ学生だからこのプロジェクトの指揮は今の社員に任せる。時々会議に参加して状況の把握だけはしておきなさい。」

「わかった。ありがとう。」

父さんに了承を得るとつーちゃんには内緒で彼女のお父さんにアポを取り、つーちゃんと僕は思いあっているから大吾くんとの結婚話をなかったことにして欲しいとお願いに行った。もちろん、お婆さんの施設の今後の計画も一緒に話すと『旺介くんは一体なにものなんだ?』と聞かれたので、父親が『月の華グループ』の創業者で現社長だと告げた。とても驚いていたが、その一言で納得してくれ、直ぐに村長に連絡をし、つーちゃんと大吾くんの結婚話を白紙にしてくれた。
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