ゲームクリエーターはゲームも恋もクリアする

助けてください

秘書に佐野の社長室へ案内された。

コンコンコン

「河合さまをお連れしました。」

と、秘書が言うと、

「どうぞ。」

と、言って佐野が部屋へ招き入れた。

佐野が、笑顔で、

「どうぞ、お掛けください。」

と、若葉に言った。若葉も促されるままソファーに座った。

「コーヒーでいいかな?」

と、佐野が言い、若葉が

「いえ、お構いなく。」

と言ったが、秘書は、壁際のドリンクコーナーでコーヒーを入れ始めた。

秘書は、若葉と佐野にコーヒーを出し終えると、扉の前で一礼してから、
出て行った。
佐野は、若葉の向かい側のソファーに座ると、

「さて、どこから話そうか・・・。」

と、つぶやいてから、真剣な表情で、

「東堂を裏切らないって約束しましたよね?」

と言った。

佐野の言葉に若葉の心はえぐられた。
言い訳のしようがない。黙ったままの若葉に、

「どうして東堂と別れようとしてるんですか?」

と、佐野は続けて質問した。
若葉は言葉が出ない。

「じゃあ、質問を変えましょう。これは何ですか?」

と、佐野がしびれを切らし、東堂のマンションに忘れて行ったはずの
有野の署名が入っている婚姻届を若葉に見せた。

「どうしてそれを・・・。」

若葉がやっと声を出した。

若葉が婚姻届に手を伸ばそうとした時、佐野はすっとひっこめた。

「返してください!」

若葉が言うと、

「ここには、有野さんの署名しかない。河合さんの物だという
根拠がない。」

と、佐野が淡々と言った。

若葉はまた、返答に困った。

「河合さん、隠さず全て話してください。そしたらこれは、
お返しします。」

若葉は、下を向き、しばらく考えてから、

「分かりました。全てお話します。」

と言った。
< 116 / 128 >

この作品をシェア

pagetop