ゲームクリエーターはゲームも恋もクリアする

デート

17:45

若葉は待ち合わせ時間より早く、15分ほど早く待ち合わせ場所のショッピングモールに着いた。
このショッピングモールの中に水族館が併設されている。

待っている間に、スマホで水族館のHPを確認すると、営業時間が18:00までとなっていた。

確認せずに約束しちゃったのね。まぁ、ゲームの開発という仕事をしていたらどうしてもこもりっきりで世間から疎くなるのかも…。と、考えているところへ、

「あれ?早いね。」

顔を上げると、目の前に東堂さんが来ていた。

「あ、今日は久々に定時で終われたので。」

「そっか。『待った?全然』、っていうのをやってみたかったから、早めに来たんだけど、ダメだったな。」

若葉はそれを聞いて思わず吹き出した。

「ふふっ、デートにどんな幻想持ってるんですか!」

「うん、理想のデートをしてみたくてね。あれ、その服、今朝と同じ?デート服じゃないよね。」

「はい、仕事帰りなので。今朝のプレゼンの時と同じですが。」

「デートっぽい服に着替えてくれる?」

と、言って東堂さんは、若葉の返事を待たずに若葉の手を取ると、エスカレーターに乗り上の階へ上がった。

このフロアは、ファッションのフロアだ。

東堂さんは、すぐに目に付いた店に入ると、

「彼女に1番似合う服、お願いします。」

と、店員に言った。

「かしこまりました。」

と言うと、店員は、すぐに、マネキンが着用しているセットアップの色違い
を用意すると若葉に試着するよう渡した。

試着室に入り、洋服のタグを見て卒倒しそうになった。今月の給料の半分は飛ぶ・・・。
たかが1回のデートで高すぎる。やはり、有名クリエーターとは金銭感覚が違うようだ。

とりあえず、着るだけ着てから気に入らないとか何とか言って断ろう。

東堂さんの横暴ぶりに驚いたが、今日はお礼をする日なので、言われるまま着替えた。試着室から出てくると、

「わぁ!すごくお似合いです!」

と、店員があからさまに持ち上げてきた。

東堂さんも、店員と一緒になって、

「よく似合ってる。これにしよう。」

と笑顔で言った。

断りづらい・・・。しょうがない。契約も決まったことだし、分割で支払いしよう。

< 21 / 128 >

この作品をシェア

pagetop