結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています


現在の自宅は霞が関から数駅のところにある高層マンションだ。

財務省をはじめ中央省庁はブラックな働き方――つまり、残業が多い。霞が関一帯にある庁舎は夜になっても明かりが消えず、不夜城とも呼ばれている。

とくに財務省の花形・主計局は、予算編成期間になると何日も家に帰れない。

俺の所属する国際局は少々毛色が違っており、近年の働き方改革で多少マシにはなったものの、忙しいことには変わりないから、通勤に時間はかけられない。

職場から家が近いに越したことはない。この通勤に便利な高層マンションには多くの省庁勤めの人間が居をかまえている。

「……ん?」

朝、自宅で登庁の準備を整えていた俺は、ふと時計が見当たらないことに気づいた。

時間に追い立てられる仕事だ。時計は必須。

もちろん、パソコンや携帯端末にも時間は表示されるが、なにかと左手首を確認するのが癖になっていた。

「失くした……? 昨日は――」

菫花たちと遊園地へ行った。しかし、園内で時計を外した覚えはない。

時系列を遡り、ふと菫花の家で洗い物をしたときに外したと気づく。

「あのときか……」

< 124 / 182 >

この作品をシェア

pagetop