結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
近くにあった棚の上に時計を置いて、そのまま。はあ、とため息をついて額に手を当てた。

急いで取りにいくほどのものでもないが、なければないで不便だ。

――そのうち取りにいけばいいが……いや……。

せっかく口実ができたのだ、使わない手はない。三年以上も愛する人に会えず我慢を続けていた身としては、とにかく菫花を渇望している。

なにより今は杏花もいる。娘の顔を毎日見たいと考えるのは、父親として当然なのではないか。

菫花は俺が杏花の父親ではないと、頑なに否定し続けているが、俺は十中八九、自分の子だと確信している。

それに、たとえ血の繋がりが一〇〇パーセント確実でないとしても、菫花の子であるなら愛してやりたい。杏花の笑顔は菫花の笑顔に直結する。

まだ出社してもいないのに、俺はすでに仕事が終わったあとのことに考えを巡らせていた。早めに退庁して彼らのもとに向かおう。なにか土産が必要か?

おいしい果物でも買っていこうか。杏花は昨日、チョコバナナのソフトクリームを食べていた。つまりバナナは好きと思って間違いない。

その日、高速で仕事を捌いた俺は、一度自宅に戻り、車で菫花たちの家に向かった。

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