結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
私が自分の部屋に向かって歩き始めると。

「来てくれ」

背後から、少し張りつめたような彼の声が響いてきた。

「俺の部屋に案内する」

「……でも」

「いつか話さなければと思っていた。兄の口からになってしまったのは悔しいけれど」

そう言って私の前に進み出ると、彼は自分が宿泊している部屋に案内してくれた。私の部屋よりひとつ上階にある、最上級のスイートルームだ。

寝室の数からして、まず違った。ベッドもワンサイズ大きい。リビングももちろん広々としていて、ベランダはふたつある。

調度品もひとつひとつが上質で、ルームサービスのバリエーションも私の部屋より手厚かった。

「……こんなに素敵な部屋に泊まっていたのに、私の部屋は狭苦しくありませんでしたか?」

一階違いとはいえ、外の景色も違って見える。今は真っ暗な海に沿岸の街の明かりがぽつぽつと見えるだけだけれど、日が昇って港に近づけば、違いが明確にわかるだろう。

窓際で外の景色を眺めながら尋ねると、彼の手がそっと腰に触れた。

「関係ない。俺は君といられればよかった」

思わぬ返答に息が詰まる。私と同じことを考えてくれていたことに、胸がわずかに熱くなる。

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