結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
「理仁さん、これは……?」

「亡くなった祖父の口座の写しだ。君の実家に、定期的に送金している。これは養育費――いや、口止め料じゃないのか」

すべて暴かれ、私はごくりと息を呑む。なにより、藤ヶ音家当主が亡くなったことを今知った。

「ご当主は亡くなられたのですか?」

尋ねると、理仁さんは「三カ月前にな」と複雑な面持ちで答えた。

「送金は止まっていない。死後も管理するように弁護士に頼んだようだ」

今もまだ実家に送金が続いている――ならば余計にこの子を理仁さんの子どもだと認めるわけにはいかない。

私は彼の膝の上にいる杏花に「おいで」と声をかけた。

私が手を広げると理解したのか、こちらにとたとたと歩いてくる。

「誤解です。この子の父親は別にいます。お別れするときにお話しした通り、私は別の男性と政略結婚をして――」

「なら、わざわざ家を出てシングルマザーをしているのはなぜだ」

両親に勧められた人と結婚するからもう二度と連絡しないでほしい――理仁さんにはそう説明して一方的に連絡を断ったのだが、亡くなったご当主の口座を見て嘘だと気づいてしまったようだ。

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