結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
私が実家にいないと知り、行方を調べていくうちに、この雑誌に行きついたのだろう。

「実家への送金に関しては、今後は俺が代わろう。祖父との約束は忘れてくれていい」

理仁さんの言葉に喜びかけるも、いやいやと考えを振り払う。

彼は『家業を継ぐ気はない』と言っていた。あくまで一官僚に過ぎないと。高給な官僚とはいえ、個人でどうこうできるような額ではない。

「そんなことは不可能です」

「可能だ。祖父の他界を受けて父が当主となった。しかし、父は高齢で持病がある。そう遠くないうちに俺に引き継ぎ、退任する予定だ。今の俺にも充分、裁量はある」

「理仁さんが次期当主に……?」

家業を継ぐ気になったのだろうか。いったい彼にどんな心変わりが……?

では彼の言う通り、杏花の父親は理仁さんだと打ち明けても、実家への送金が絶たれることはない?

でも、一度約束したものをそう簡単に破棄するなんて……。

ご当主だって、なにも気まぐれや嫌がらせで私にこんな契約を持ちかけてきたわけではない。理仁さんの幸せを心から願ってのことだ。

多額の金銭を支払ってでも、良家の女性と結婚してほしかった。それが孫の幸せな未来に繋がると信じていた。

その強い意思を無視して許されるだろうか。

「頼む、菫花。真実を教えてくれ。この子のためにも」

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