結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
家を出てひとりになったとき、働こうにも私の経歴じゃ全然通用しなかった。

悲しい思いもたくさんしたけれど、こんな私でも人から褒めてもらえる特技があったんだ。

なにより理仁さんが認めてくれた。大好きな人がすごいと言ってくれたことが、心から嬉しくて。

そう心の中でつぶやいて、ハッとする。

いつの間にか理仁さんへの想いが胸の中で再び燃え上がっていた。彼の隣にいることがこんなにも心地よくなってしまうなんて。

理仁さんとは結婚できない、杏花の父親だと認めてはならない――そんな重要な前提条件を忘れかけていた。

「……そうですね。このスキルのおかげで、副収入を得ることができました。これで、私一人でもなんとか杏花を育てることができます」

突き放すような言い方をすると、理仁さんは微笑みながらも寂しそうに眉尻を下げた。

悲痛な表情に胸がぎゅっと痛みだす

たとえ今、彼を傷つけることになっても、これは全部理仁さんのためだといつかわかってくれるはずだ。理仁さんを愛する前当主の意志だ。

ふと杏花が私の方を見上げる。

「ママ、おいちーよ? きょうもおべんと、あいがとー」

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