野良狼と野良少女
「一ノ瀬、くん…!」
驚いた顔で屈んだ一ノ瀬くんに抱きつくと、大きな腕が背中に回ってそのまま頭を撫でてくれた。
それから約10分、私はひたすら大泣きしたのであった。
「……は?浮気?」
「だって、壮馬さんが…一ノ瀬くんとエミリさんが…!」
「うん、分かった。分かったからもう泣かないで」
リビングに移動してソファで状況を整理しようにも、感情の抑えが効かない私は何度も涙があふれる。
その涙を全部拭ってくれる一ノ瀬くんはとても穏やかな顔をしていた。
「チッ、あのクソ野郎まじでシバく」
「…っ、だめだよ。壮馬さんも一ノ瀬くんが女の子と一緒にいたから」
「アイツはエミリのこと知ってる。…つーかエミリの幼なじみだし。」
「…え」
「羅奈の家向かってたら繁華街でエミリに捕まって、急いでるって言ってるのに離してくれなかった」
学校からうちに向かうルートの近道が繁華街を通る道らしく、そこを通った時のこと
エミリさんの学校は今日開校記念日で休みだったらしく、遊びに来ていたところを一ノ瀬くんと遭遇。
そして腕に絡みつき足止めしていたらしい。