課長に恋するまで
「実はゆかりさんというホステスさんに聞きたい事がありまして」

 鈴木さんの事は出さずにそう課長に話した。
「昨日も来たんですけど、会わせていただけなくて。それで、今夜も来たんですけど、課長とゆかりさんの姿が見えまして、課長のお名前をお借りしました」
「なるほど」
「あの、ゆかりさんをご紹介していただけないでしょうか」

 課長がグラスの中の丸い氷を溶かすように回した。カランと音が鳴り、琥珀色の液体が揺れた。
 課長は考えるようにじっとグラスの中を見ている。
 
 何を思ってるんだろう。

 迷惑だって思ってるのかな。邪魔だって思ってるのかな。
 居たたまれない気持ちになった。

「すみませんでした。やっぱりいいです。帰ります」

 席を立った。
 これ以上、課長に迷惑をかけたくない。

「待ちなさい」

 課長がグラスから顔を上げた。

「今、呼んで来ますから、一瀬君はここで待ってて下さい」
「紹介していただけるんですか?」
「もちろん」

 課長が口角を上げて、笑みを浮かべた。

 大丈夫だよって、言ってくれてるような笑顔だった。
 緊張してた気持ちが少しだけ緩んだ。
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