愛のかたち
「何かすげぇ旨そうな匂いしますね」

 匂いに釣られた数人の社員が、キッチンに集まってきた。

「残念だけど、俺の分しかねーんだわ」

 野上はいたずらっ子のような表情をして言った。

「えーっ、ズルイっすねぇ」

 社員達が残念がる様子を見せると、「でも」と野上が続けた。

「明日からここで、うちの社員の昼食を作ってもらえることになったんだ。こちら、彩華さんです」

 一斉に彩華に視線が向けられた。

「あ、あの……料理は得意なほうです。リクエストなどがあれば、いつでもおっしゃってください」

 彩華は初めての経験に不安を感じながらも、先の見えない状態から抜け出せたことに安堵していた。そして、自分を変える大きなチャンスかもしれない、と、これから始まる新しい生活に少しだけ胸を弾ませた。
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