愛のかたち
 翌日、彩華は九時に出勤した。昼食に間に合えば、出勤時刻は自由で構わないと言われていた。

「おはよう」

 野上がコーヒーを片手にサンドウィッチを頬張っていた。

「おはようございます。今日から宜しくお願いします」

 彩華は深く頭を下げてからにっこり微笑んだ。
 専業主婦だった自分が、居酒屋で知り合った野上の元で働くことになるなど、想像するどころか考え及びもしなかったことだ。しかもこんなにも素敵なオフィスのキッチンで。
 本来ならば誰かに自慢したくなる出来事なのだが、離婚が理由の就職は手放しで喜べなかった。
 仕事が決まったことを翔に報告しようかと思ったが、野上をあまり良く思っていなかった翔は、きっといい顔をしないだろう――と、そんなことを考えている自分に気付いて苦笑した。
 そんなことを翔に思われることも言われることも、もうないのに、と。
 そして切ない気持ちになった。
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