愛のかたち
 一ヶ月近く経つと、彩華は社員の顔と名前も完璧に覚えていた。準備も手際よく進められるようになり、余裕のある時は、デザートを作ることもあった。献立を立ててスーパーに行っても、お買い得品に釣られて結局予定を変更してしまうことがよくあるが、まあそれならそれでいいか、と臨機応変にやっていた。
 彩華の作る料理は大好評だった。足りないよりはいいだろう、と少し多めに作るようにしていた。最終余った分は保存容器に移して冷蔵庫に入れておくと、独身社員達が分けて持ち帰る。野上が持ち帰ることもあると聞いた。
 翔が毎日空になった弁当箱を持って帰ってきた時のように、翌朝「ご馳走さまでした」と綺麗に洗った容器を渡されると、幸せな気持ちになった。この仕事を与えてくれた野上には本当に感謝していた。
 昼食後は、洗い物当番の社員達でキッチンが賑わう。野上が言っていた社員とのコミュニケーションは、やはりここで深まるような気がした。女性社員からは、ラタトゥイユやエスニック料理などのリクエストがあったり、個人的にレシピを教えて欲しいと言われることもあった。
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