愛のかたち
「翔ちゃんが何一つ言い訳しなかったこと、すごく悔しかったけど、やっぱり私が惚れた男らしい翔ちゃんだって思ったよ」

 突然立ち上がった翔が目の前に移動し、倒れこむように覆い被さってきた。

「彩華、戻ってきてほしい」
「え?」
「彩華がいないと駄目なんだ」
「翔ちゃん……」

 プライドの高い翔が口にしたその言葉の意味と思いが、わかりすぎるぐらいわかってしまう。

「俺、今まで彩華に甘え過……」
「翔ちゃん、わかったから……」

 彩華が言葉を遮り、背中をトントンと叩いてから体を離そうとすると、翔は彩華を抱く腕に更に力を込めて、彩華の首もとに顔を埋めた。

「もう離れたくないんだ」

 翔の必死さが伝わっていた。自分と同じくらい、翔も苦しかったのだろうと感じた。
 彩華が翔の背中に両手をまわすと、翔は安心したように深い溜め息を漏らした。

「彩華を失うぐらいなら、みっともない真似でも何でもすれば良かった……」

 もういいよ、と言ってあげたかった。もう十分に伝わっていた。

「別れてから一日たりとも、お前のこと考えない日はなかった。……愛してる」

 彩華はそれに答えるように、力一杯翔を抱きしめた。

 二人で座敷を出ると、翔が健太に言った。

「明日、彩華と一緒にまた来る」
「おう」
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