愛のかたち
 彩華は翔に手を引かれて店を出た。
 外で翔に手を繋がれたことなんて今まであっただろうか、と考えながら、一歩先を歩く翔の横顔を眺めていた。

「今日、野上さんに呼ばれてたんだけど、多分彩華のこと聞かされんだろうなと思ってたんだ」
「私のこと?」
「うん。この前、お前普通に野上さんの車乗ってたし、何か……そういうことなのかなって思ってさぁ。俺の女なのにって言えねぇことが、すげぇ悔しかった」

 あの時翔が見せた何か言いたげな顔が、おそらくそれだったのだろう。

「まあ、全て俺が悪いんだけどな。でも野上さんには、この前『いとう家』で会った時に、話してたんだ。俺の子供じゃなかったってこと」
「え? でもそんなこと、野上さんひと言も言ってなかったよ」
「そりゃそうだろ。俺が野上さんの立場だったら絶対言わねぇし、今日の……こんな粋な計らい、絶対出来ねぇな。格好良すぎだろ」

 翔が悔しそうに笑っていた。
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