愛のかたち
「ただいま」
「え?」

 彩華は思わず翔を見上げた。

「おかえり。今日は遅かったのねぇ……あ、彩華っ!?」

 母は肩を跳ね上げて至極驚いているが、彩華はそれ以上に驚いていた。

「おかえりって……どういうこと?」

 彩華が母に尋ねると、母は翔に目配せした。

「毎日晩御飯食べさせてもらってるんだ」

 翔の言葉に、彩華は瞬きを繰り返した。

「まあ、とりあえず入れば?」

 母に促され中に入ると、キッチンの奥から父の声がした。
「翔、おかえり」と言った父は、後ろにいる彩華に気付くと目を見開き、母と同じように肩を跳ね上げた。
 何がどうなっているのか全く理解できなかったが、自分のいないところで何かがあったことは確かだ、と彩華は感じた。

「こいつが、彩華の飯が食いたいって泣いてたから……」

 父が顔を顰めて言った。

「いや、泣きはしませんでしたよ」

 翔は苦笑いしている。

「あれ? そうだったかな」

 父は茶目っ気たっぷりに舌を出して肩を竦めた。
 そうして、二人分の夕食を用意してくれた父は、「ゆっくりしていけ」と言うと二階へ上がっていった。
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