あなたしか知らない
無言でふたりは見つめあった。
探るような凌の眼差しを受けて、祐奈は自然に目を閉じる。
祐奈はすぐに息が止まりそうなほどの衝撃を受けた。それほど二度目のキスは激しかった。
祐奈には初めてのことだからよくわからないのだが、どうしようと考える間もなく唇を奪われていたのだ。
唇を挟まれるようなかまれるような感覚なのに、痛みはなくて柔らかくて甘い。
(感じている、凌さんを)
熱いといえばいいのだろうか、自分の唇がこれほどまでに雄弁だとは思わなかった。
凌の顔が離れたので、ゆっくりと祐奈は目を開けた。
「急に悪かった。どうしても君に触れたくなった」
「あ……」
凌の指が、祐奈の唇に触れる。そこは余韻でふっくらとしているはずだ。
「また会ってくれるか?」
祐奈は無意識のうちに、コクリと頷いていた。
***
車から降りて凌を見送りながら、祐奈は後悔していた。
(もう会わない方がいいのに……)
すぐに断れなかった。
彼に会いたい、彼のそばにいたいと願ってしまった自分が情けなかった。