実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
「少しは僕のこと、好きになってくれました?」


 頬に触れる指の温もり。挑戦的な笑みに、胸がキュンと疼いた。


「なっ……それは、えぇと………」

(しまった)


 「少しはね」って軽く返したら良かったのに、あろうことかわたしは、戸惑い、言い淀んでしまった。


(これじゃまるで『そうだ』と答えているようなものじゃない)


 ランハートはわたしの反応に満足したらしい。ケラケラと笑いながら頭を撫でてきた。


「……わたし、まだなんにも言ってないんだけど」

「ええ。言葉では何も言われてませんね」


 自分で腹黒いと言うだけのことはある。ランハートは意地悪な笑みを浮かべつつ、小さく肩を竦めた。


「~~~~っ! 大体、ランハートが悪いのよ? 『姫様を想って』みたいな言葉は綺麗ごとだって、前に自分で言っていたじゃない。わたしの心を掴もうとするのは面倒みたいなことも言っていたでしょ? それなのに、『少しは好きになってくれました?』なんて聞く方がどうかと思うわ」


 以前のランハートとのやり取りを思い返しつつそう口にすると、何だか胸がムカムカしてくる。


(あの時は感心こそすれ、イライラなんてしなかったのになぁ)


 どうしてそんな風に感じるのか、その理由が分からなくて、わたしはプイと顔を背ける。何だか無性に頬が熱いし、心臓のあたりがザワザワして落ち着かない。


「そう言えばそうですね」


 すると、ランハートはそんなことを言いながら目を丸くした。どうやら無自覚だったらしい。


「しっかりしてよね」


 言いながら思わずため息が漏れる。
 一度方針を定めたなら、簡単にブレちゃいけない。トップの人間は尚更そう。わたし達がブレたら、動いてくれる文官や騎士達は困ってしまうもの。


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